美白成分として知られるトラネキサム酸ですが、本当にすべての製品で美白効果が期待できるのでしょうか?
この記事では、トラネキサム酸が必ずしも美白の有効成分とは限らないという、化粧品業界の一般的な誤解について、現役の化粧品開発者が解き明かします。化粧品の成分と有効成分の違い、特にトラネキサム酸やアスコルビン酸2グルコシドなどの成分がどのようにして美白効果を持つのか、またそれが実際の製品にどのように反映されるのかについて、プロの視点から詳しく解説します。
この記事を通じて、ユーザーの皆様が、より適切な化粧品選びをするための知識を得ることができます。
本記事の内容
- 必ずしもトラネキサム酸は、美白の有効成分にはならない事実を、現役の化粧品開発者が解説
この記事を書いている人
コスメデイン
- 大手化粧品メーカーで15年以上化粧品開発を担当
- 今も現役の化粧品開発者
- 美容雑誌の監修経験あり
- 現役の化粧品開発者が業界の最前線で得てきた知見を「コスメの真実」としてお届けします!
美容雑誌の監修に協力させて頂きました(一部抜粋)
▶【2023年】乾燥肌向け保湿フェイスパウダーのおすすめ8選。プチプラ、ツヤ肌タイプなどLDKが比較
▶ 乾かないメイクは下地を要チェック! 成分&テクスチャーのポイントは? LDKが紹介
▶ ジュワッと発光肌! 乾燥季節こそハイライト使いがおすすめです。LDKが紹介
▶ 「肌が弱い=洗顔は弱酸性」は思い込み? 敏感肌のスキンケアポイントをLDKが紹介
▶ 「インフルエンサーの真似しよ」はNG?ベースメイクの秘訣をLDKがおすすめ
▶ 顔だけ真っ白!ファンデ失敗の回避方法をLDKがおすすめ
▶ 実はメイク落とせてない!?クレンジングの間違いない選び方をLDKがおすすめ
▶ 【日焼け止め】美容成分入りの思わぬ落とし穴とは?買う前に知るべき注意点(LDKおすすめ)
成分と有効成分の違いとは?
まず、成分と有効成分の違いをご説明します。
化粧品領域には、医薬部外品と言うものが存在します。薬用化粧品とも言います。
その名が示す通り、「化粧品」と「医薬品」の中間に位置し、「化粧品」同等の高い安全性を有しながら、「医薬品」とまではいかなくとも、「化粧品」以上の改善効果が期待できるのが医薬部外品です。
医薬部外品とするためには、「特定の症状に対し、改善効果がある!」と、国が認めた(認可した)成分を配合しなければなりません。
この、医薬部外品とするための、国が特定の効果を認めた成分を有効成分と言います。
美白であれば、「アルブチン」や「ビタミンC誘導体」が有効成分ですし、肌荒れ防止であれば「グリチルリチン酸ジカリウム」が有効成分です。
さらに重要なことは、有効成分とするためには、国が効果があると認めた量を配合する必要があります。
例えば、ビタミンC誘導体である、「アスコルビン酸2グルコシド」は美白効果がある成分ですが、「美白効果が期待できる」と、国が認め指定した配合量は2%です。
ですから、2%配合しない限り、美白の有効成分と言うことは出来ず、医薬部外品にもなりません。
アスコルビン酸2グルコシドの場合は、2%未満の配合量で、化粧品として発売するケースがあります。2%未満の場合、美白の有効成分とは成り得ず、化粧品としてしか発売出来ません。
アスコルビン酸2グルコシドは、美白効果がある「成分」ですが、必ずしも、美白の「有効成分」とはならない
これが正しい解釈です。
国が効果があると認めた成分を、指定量配合して、はじめて有効成分となるのです。
以上を知っておけば、メーカーの宣伝内容を、勘違いすることなく正しく理解し、最良のコスメを選択出来ます。
次項では、有効成分に関わる、ユーザーが勘違いしがちな事例をご紹介します。
勘違い事例:アスコルビン酸2グルコシドは美白の有効成分?
先程もご説明しましたが、ビタミンC誘導体であるアスコルビン酸2グルコシドは、美白効果のある成分として有名ですが、必ずしも美白の有効成分ではありません。
これが、勘違い事例の一つです。
化粧品開発者の立場から言うと、アスコルビン酸2グルコシド(AA2G)は、美白効果は優秀ですが、製剤へは、非常に配合しずらい成分です。
特に、乳液や(オールインワン)ジェルへの配合が困難です。
何故なら、乳液やジェルには、カルボマーという増粘剤が配合されますが、カルボマーは電解質存在下では、増粘効果を全く発揮しません。
「AA2G」は「電解質」ですから、「AA2G」存在下では、カルボマーは全く増粘しませんので、そもそも、乳液やジェル剤型に「AA2G」の配合は無理なんです。
※勿論、例外もありますが、感触がかなり犠牲になります
その場合、化粧品開発者はどうするか?
まず、有効成分を「AA2G」から、アルブチンに変更し、アルブチンを美白の有効成分とした医薬部外品にします。
乳液やジェル剤型に、「アルブチン」や「プラセンタエキス」を有効成分とした医薬部外品が多いのはこのためです。これらは、増粘剤(カルボマー)の増粘効果に影響を与えず、共存が可能です。
もう一つの手が、「AA2G」を、カルボマー増粘効果に影響を与えない超微量配合にすることです。
超微量ですから、当然、医薬部外品ではなく化粧品になります。
※AA2Gを美白の有効成分とするためには「2%」の配合が必要です
また、「コストが合わない」、「でも、AA2Gを配合して、美白効果があるコスメっぽく売り出したい!」という化粧品メーカー側の都合で、「AA2G」を超微量配合して、医薬部外品っぽく、化粧品として販売するケースもあります。
美白の有効成分とし、医薬部外品として販売するためには、AA2Gを2%配合しなければなりません。
しかし、AA2G 2%配合は、かなりの原料価格になります。超微量であれば、相当なコストダウンが可能です。
残念な事ではありますが、乳液やジェル剤型に配合したい!や、原価を抑えたい!という化粧品メーカー側の都合によって、アスコルビン酸2グルコシドを超微量配合し、あたかも、美白の有効成分を配合し、美白効果のある医薬部外品風に販売している化粧品はあります。
※化粧品の場合、美白という表現は使えません
見分け方は簡単です。
医薬部外品の場合、全成分表示の仕方が化粧品とは違います。
※基本、医薬部外品に全成分表示義務はありませんが、業界団体は、医薬部外品にも全成分表示を推奨しています
医薬部外品の場合、有効成分とその他の成分という表記をしているので、「有効成分欄」に、AA2Gの記載があるかないかを確認すればすぐに分かります。
ただし、全成分まで確認しないユーザーもいると思いますし、HP上では全成分を公開していなくて、商品が届いて初めて気づくというケースもありますから、ご注意ください。
勘違い事例:トラネキサム酸は美白の有効成分?
今回の記事の本題です。
話題の成分、トラネキサム酸は美白の有効成分か?
答えは、先程の「アスコルビン酸2グルコシド(AA2G)」同様、「NO」です。
トラネキサム酸は、必ずしも美白の有効成分とは成り得ません。
ただし、AA2Gとは少し違うケースです。
実は、トラネキサム酸は、美白の有効成分であると同時に、肌荒れの有効成分でもあるのです。
医薬部外品の有効成分の中には、配合量によって、期待できる改善効果が複数あるものが存在します。トラネキサム酸がその代表例で、配合量により、肌荒れの有効成分にも、美白の有効成分にも成り得るのです。
ですから、必ずしも、トラネキサム酸=美白の有効成分ではありません。
この配合量(指定量)ですが、美白の有効成分にするためには、「アスコルビン酸2グルコシド」は2%、「アルブチン」は3%と決まっています。
アスコルビン酸2グルコシドとアルブチンの指定量、2%と3%は、すでに広く知れ渡っている事実ですが、トラネキサム酸の指定量に関しては、ここでの公表は控えます。
トラネキサム酸の場合、肌荒れの有効成分とするための指定量と、美白の有効成分とするための指定量には、大きな差があります。
美白の有効成分とするための指定量の方が圧倒的に多く、それだけ技術的ハードルが上がります。
この指定量を守った場合に限り、トラネキサム酸は、肌荒れの有効成分にもなり、美白の有効成分にもなるのです。
同じことが、レチノールにも言えます。
レチノールと言えば、2017年2月、資生堂が、日本で初めて、純粋レチノールによるシワ改善効果の承認を得たと発表し、2017年6月、純粋レチノール(シワ改善の有効成分)を配合した医薬部外品を、エリクシールブランドで発売しました(エリクシール シュペリエル エンリッチド リンクルクリームS)。
資生堂の偉業により、レチノールはシワの有効成分となりましたが、以前から、肌荒れの有効成分としても配合されていました。
つまりレチノールは、肌荒れとシワの有効成分なんです。
話しを本記事の主役であるトラネキサム酸に戻しますが、トラネキサム酸は、「第一三共ヘルスケア」のトランシーノブランドの功績もあり、美白の成分とのイメージが強いです。
しかし実際は、肌荒れの有効成分でもあるので、中には、肌荒れの有効成分として配合したトラネキサム酸を、「美白の有効成分」と勘違いして購入し、今なお使用中のユーザーもいらっしゃるのかもしれません。
トラネキサム酸配合コスメの場合、商品の周りに記載されている内容をよく読んで、美白か肌荒れか、確実に把握した上でお使いください。
おわりに
いかがでしょうか?
この記事を通じて、トラネキサム酸やアスコルビン酸2グルコシドなど、美白成分として知られる成分が、実際には必ずしも美白の有効成分とは限らないことがお分かりいただけたかと思います。
化粧品の成分と有効成分の違い、そしてそれらがどのように製品に反映されるかについて、プロの視点から詳しく解説しました。美白効果を求める際には、単に成分名に惑わされず、その成分がどのような役割を果たし、どの程度配合されているかを理解することが重要です。
また、化粧品選びにおいては、メーカーの宣伝内容だけでなく、成分表示や配合量にも注意を払い、自分の肌に合った製品を選ぶことが肝心です。
この記事が、皆様のより良い化粧品選びの一助となれば幸いです。最後に、美白成分に関する正しい知識を持つことで、より効果的で安心なスキンケアライフを送っていただければと思います
※本記事は個人の感想であって効果を保証するものではありません