世の中は、
敏感肌には紫外線散乱剤の方が良い
敏感肌用=ケミカルフリー(紫外線吸収剤フリー)
の流れですが、これは本当に正しいのでしょうか?
この記事では、現役の化粧品開発者の私がプロの視点で、これらの疑問にお答えいたします。
この記事を書いている人
コスメデイン
- 大手化粧品メーカーで15年以上化粧品開発を担当
- 今も現役の化粧品開発者
- 美容雑誌の監修経験あり
- 現役の化粧品開発者が業界の最前線で得てきた知見を「コスメの真実」としてお届けします!
美容雑誌の監修に協力させて頂きました(一部抜粋)
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敏感肌と日焼け止め
先日、以下記事で、吸収剤と散乱剤の『肌への優しさ(安全)』について記事にしました。
世の流れ・イメージは、「吸収剤は肌に優しくなくて(刺激がある)、散乱剤は肌に優しい」ですから、本当に「吸収剤は刺激がある?」・「散乱剤は優しい?」に対して、化粧品開発者の立場から論じました。
結論は、「散乱剤の方が肌に優しい」ですが、世の中の認識ほど、吸収剤は肌に刺激があるわけではありません。
正しい知識の元であれば、安全にお使い頂ける成分で、非常に優秀な効果を発揮するのが吸収剤です。
しかし両者を比較すれば、「散乱剤の方が肌に優しい」ですから、
最重要ポイント
敏感肌であれば、紫外線吸収剤よりも紫外線散乱剤の方が適している!
これはある意味間違いではなく、本記事の問いに対する回答になりますが、重要なことは「何故、敏感肌=散乱剤(酸化チタン)なのか?」であり、ネットなどの情報は非常に薄っぺらですから、このブログでは化粧品開発者らしく、より深くご説明します。
敏感肌に吸収剤は少し不安
日焼け止めには、紫外線ダメージから肌を守る成分、『紫外線吸収剤(吸収剤)』と『紫外線散乱剤(散乱剤)』が配合されます。
吸収剤は肌刺激性に懸念がある成分です。
勿論、コスメ(医薬部外品を含む)への配合を許可されている時点で、吸収剤は、危険な成分ではなく安全にご使用頂けますが、散乱剤に比べれば、肌刺激性がある成分と言えます。
だからこそ、各吸収剤の配合上限は国によって決められており、化粧品メーカーが日焼け止めコスメに吸収剤を配合する際は、『発売国の配合規制』に準ずる必要があります。
「吸収剤は肌刺激性がある」・「吸収剤は肌に優しくない」と訴えるブログ・ブロガーがたくさん存在しますが、それらは、何故?という『理由』まで論じていませんから、薄っぺらです。ご注意ください。
何故、散乱剤に比べて吸収剤は肌刺激性に懸念があるのか?
理由は2つあります。
吸収剤は低分子のため角質層に浸透する
スキンケア品に配合される油(オイル)は、分子量が大きく、肌の角質層に浸透することはありません。
しかし吸収剤は、コスメに配合されるオイルの中で、最も分子量が小さいオイルの一つですから、肌の角質層に浸透します。
テープストリッピング法で、吸収剤が角質層に浸透していることを示すデータは、いくらでも存在します。
万一、角質層に吸収剤が浸透しても、肌には『バリア機能』が備わっていますから、大きな問題とはなりません。しかし敏感肌の方は、バリア機能が十分ではないため、吸収剤によってさらにバリア機能が破壊され、ダメージを受けることは十分考えられます。
吸収剤の肌浸透性(経皮吸収性)を考慮して、肌に浸透しない『高分子の吸収剤』が開発されましたし、吸収剤をカプセル化して、肌との接触を防ぐ『吸収剤カプセル』も開発されています。
吸収剤は紫外線によって分解する
吸収剤の『紫外線吸収メカニズム』をおさらいしましょう。
吸収剤『A』は自ら紫外線を吸収し、『A'』という成分に変化します。吸収剤「A」が紫外線を吸収するからこそ、肌に紫外線が到達するのを防ぐことができ、紫外線ダメージから肌を守るのです。
「A'」という成分は、熱などのエネルギーを放出しながら再度、吸収剤「A」に戻ります。
つまり、吸収剤は「A ⇄ A'」という『サイクル』を繰り返しています。しかし、このサイクルは永遠に続くものではなく、「A'」が『A"』や『A'''』という、吸収剤「A」とは全く別の成分に変化してしまいます。
「A ⇄ A'」となるべきところ、「A→A'→A", A'''」となり、吸収剤「A」の量が減ります。つまり、『分解した』ということです。
これが、『吸収剤の紫外線による分解(光安定性)』です。吸収剤は散乱剤に比べ、光安定性が圧倒的に悪いです。
吸収剤の光安定性の悪さによって懸念されることは、『紫外線防御機能の持続』です。
吸収剤は上図のように、光(紫外線)によって分解します。分解したモノは紫外線を吸収する能力はありませんから、紫外線防御機能が持続しません。
もう一つが『肌刺激性』です。
吸収剤「A」の肌刺激性(安全性)は、化粧品メーカーや原料メーカーによって十分に確認されますが、吸収剤「A」の分解物「A''」・「A'''」の肌刺激性は『不明な点』が多く、これが「吸収剤=肌刺激性に懸念がある成分」と考えられる一つの要因になっています。
普通に考えれば、分子量が小さな吸収剤の分解物ですから、さらに分子量が小さく、肌浸透性が高いと予測されます。ですから、バリア機能が十分ではない敏感肌の方は、吸収剤配合の日焼け止めコスメの使用は避けるべきでしょう。
敏感肌であれば酸化チタン(散乱剤)を選ぶべき
日焼け止めに配合される酸化チタンや酸化亜鉛(散乱剤)は、非常に粒子が小さな『微粒子』です。
ですから、日焼け止めの場合は、『微粒子酸化チタン』・『微粒子酸化亜鉛』と表現されますが、全成分表示上は「酸化チタン」・「酸化亜鉛」です。
「微粒子」ゆえ、『ナノ問題』がクローズアップされていましたが、現在では、微粒子酸化チタン・微粒子酸化亜鉛配合のコスメ使用は問題なしと結論付けられています。
『肌刺激性(安全性)』という点では、吸収剤よりも散乱剤の方が優れているため、敏感肌でお悩みの方には、散乱剤配合の日焼け止めが最適です。
ただし、散乱剤配合の日焼け止めであっても、誤った知識の元、誤った使用法では肌トラブルにつながりますから、以下の点にご注意ください。
TPOに合わせたスペックを選ぶこと!
敏感肌に最適と言っても、散乱剤は『粉末』です。長時間、「粉末」が肌上に存在するということですから、肌は『乾燥』しやすくなります。
SPF, PAが高ければ高いほど(高スペックほど)、散乱剤の配合量が多くなり、乾燥しやすくなる!
散乱剤による乾燥よりも、紫外線ダメージの方が深刻ですから、乾燥など心配する必要はないという考え方もありますが、敏感肌の方はバリア機能が不十分で乾燥肌でもありますから、散乱剤による乾燥は考慮に入れるべきでしょう。
そもそも日焼け止めの紫外線防御スペックは、『TPOに合わせるべき』であって、高ければ高い方がいいという訳ではありません。
屋外で長時間活動しない人、スポーツをしない人が、「SPF 50+, PA++++」の最高スペック品を使用する必要などありません。
無駄に肌へ負担をかけるだけですから、日常生活レベルであれば、『SPF 20~30, PA++~+++』で十分です。
『無駄な負担』から肌を守るためにも、紫外線防御スペック(SPF, PA)は、『TPOに合わせて』お選びください。
ある程度の白浮きは許容すべき!
散乱剤配合の日焼け止めコスメは『白浮き』、つまり、塗布後白くなります。
散乱剤は『白色粉体』ですから、塗布後、どうしても白くなってしまうのです。
この『白さ(白浮き)』を避けようと、多くのユーザーが、少量の日焼け止めを薄く塗ろうとします。
今の日焼け止めは、伸びが抜群に良いですから、少量を薄く塗れてしまいます。
しかしこれは、十分な紫外線防御効果が得られない『誤った使用法』ですから、「日焼け止めを塗ったのに焼けてしまった・・・」という『いつの間にか日焼け』の原因となります。
「いつの間にか日焼け」を避けるためにも、日焼け止めは、『たっぷりの量をこまめに塗り直す』必要があります。
『たっぷりの量』を塗る必要がありますから、多少の白浮きは許容すべきです。
白浮きよりも避けねばならないことは、『(いつの間にか)日焼け』です。
日焼け止めを使用後は確実に洗い流すこと!
日焼け止めを使用後は、必ず洗い流すようにして下さい。
世の中には、「洗顔で落とせる」「専用クレンジング不要」など、『洗い流しの良さ』を宣伝する日焼け止めがたくさん存在します。
どのような宣伝文句であっても、散乱剤は、容易に毛穴に入り込むことが出来る『超微粒子の粉体』ですから、クレンジング力に優れるクレンジングで落とすことをおすすめします。
最もクレンジング力に優れるのが『オイルクレンジング』です。
例えば、『アテニアスキンクリア クレンズオイル』。
@コスメベストアワード ベストクレンジングで複数年、『第一位』を受賞しているオイルクレンジングです。
おわりに
いかがでしょうか?
敏感肌の方には、吸収剤よりも、肌刺激性が低い『散乱剤配合の日焼け止め』がおすすめです。
ただし、散乱剤配合の日焼け止めであっても、誤った知識の元・誤った使用法では、肌トラブルにつながります。
是非、正しい知識・正しい使用法で、日焼け止めコスメをお選びください。
※本記事の内容は個人の見解であって効果を保証するものではありません