世の中には、『落ちない・崩れない』を謳うメイク品が多いです。
ファンデーションやリップ、マスカラなどのメイク品は、『お肌を綺麗に見せること』が一番重要な役割ですから、落ちず、崩れず、綺麗な状態をずっとキープしてくれるのなら、こんなにうれしいことはないですね。
でも、本当に落ちず、崩れないのでしょうか?
今回は、『落ちないメイクの真実』と題しまして、落ちない、崩れないメイクの秘密をお話しします。
この記事を書いている人
コスメデイン
- 大手化粧品メーカーで15年以上化粧品開発を担当
- 今も現役の化粧品開発者
- 美容雑誌の監修経験あり
- 現役の化粧品開発者が業界の最前線で得てきた知見を「コスメの真実」としてお届けします!
美容雑誌の監修に協力させて頂きました(一部抜粋)
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落ちない、崩れないメイクは本当?
ネット上には、『落ちない、崩れない』という表現が多く用いられていますが、おそらくこれは、個人ブロガーの方が、メイク品を紹介する際に使われる表現で、それが拡散しただけでしょう。
メイク品に落ちない、崩れないという表現は出来ませんし、そもそも、落ちない、崩れないメイクなど存在しません。
メイクは必ず落ちます。
ただし、様々な技術によって、『落ちにくい、崩れにくいメイク』は存在します。
どのような技術で、落ちにくい、崩れにくいメイクは誕生したのでしょうか?
落ちにくい、崩れにくいメイクの秘密
お肌を綺麗に見せることがメイク品の使命ですから、その状態を長時間キープする『崩れにくさ』、つまり、『化粧もちの良さ』は、メイク品における最も重要な要素です。
ですから、化粧品メーカーは化粧もち向上のために、様々な検討をし、技術を開発しています。
メイク品の骨格は、『ベース部分』と『色部分』に分かれます。ベース部分が水、油、界面活性剤などで、色部分が、色素、顔料(酸化チタン、酸化鉄)です。
ですから、化粧もち向上のための技術も、『ベース部分』と『色部分』に分かれます。
アイテム別に詳しくご説明します。
ファンデーション
崩れにくいファンデーションには、『ベース部分』、『色部分』、双方の技術があります。
まずは『色部分』。
一般的にファンデーションの肌色は、『酸化チタン』と『酸化鉄』(黄酸化鉄、赤酸化鉄、黒酸化鉄)を混合して作られます(調色と言います)。
酸化チタンと酸化鉄を『顔料』、または『無機顔料』と言います。
通常、酸化チタンと酸化鉄は水にも油にも馴染みます。ですから、このままファンデーションに配合しても『汗』や『皮脂』に弱く、崩れやすくなってしまいます。
ですから、崩れにくくするため、つまり、酸化チタンと酸化鉄を、汗や皮脂に強くするために、酸化チタン、酸化鉄の表面を処理します。
これを、粉体の『表面処理』と言います。
全成分表示では、酸化チタン・酸化鉄と表面処理剤は、分かれて表示されるので、表面処理の粉体を使っているかの判断は難しいですが、崩れにくさを謳うファンデーションであれば、表面処理顔料を配合するのが一般的です。
一昔であれば、汗にも皮脂にも非常に強い、『フッ素系の処理』をしていましたが、安全性の観点から、フッ素はあまり用いられなくなりました。現在であれば、『シリコーン処理』が多いですね。
このように、無機顔料(酸化チタン、酸化鉄)の表面の性質を変えるため、『表面処理』を施し、崩れにくくしています。
次に『ベース部分』。
ファンデーションにはパウダーやリキッドなど、様々なタイプがありますが、パウダーは比較的崩れにくいので、リキッドについてご説明します。
リキッドは『乳化タイプ』です。乳化タイプには『水中油型』と『油中水型』があります。
▼水中油、油中水については以下記事をご覧ください
水中油型よりも油中水型の方が、汗や皮脂には強いです。ですから、崩れにくいファンデーションは『油中水型』が多いです。
さらに崩れにくくするために、『被膜形成剤』を配合します。塗布後、お肌表面に『フィルム状の膜』を形成して、崩れにくくするといったものです。
代表的なものに『(アクリレーツ/ジメチコン)コポリマー』がありますが、「〇〇コポリマー(共重合体)」というものは皮膜形成剤が多いです。
ただし、皮膜形成剤をたくさん配合すると、お肌がパリパリして突っ張りやすく、使用感と仕上がりが悪くなるので、たくさんは配合できません。
以上のように、ファンデーションの場合は、無機顔料(酸化チタン、酸化鉄)の『表面処理』と、『油中水型』及び、『被膜形成剤の配合』で崩れにくくしています。
リップ(口紅)
リップ(口紅)の場合は、落ちにくくするための『色部分』の技術はほとんどありません。
リップは、赤系、黄色系、黒系、白系の成分を混ぜて色を作ります。
※メーカーによって異なる場合はあります
通常、黒系には酸化鉄(黒酸化鉄)、白系には酸化チタンを使いますが、赤系、黄色系には『タール系色素』を使います。
タール系色素とは、『有機色素』、『法定色素』とも言われますが、『構造を変えてはいけない』という決まりがあります。
つまり、無機顔料のような『表面処理が出来ない』ということです。
※法定色素の表面処理は、種類は少ないですが存在はします。ただし、構造を変えていないという証明が必要なので大変です。
ですから、リップを落ちにくくするには、『ベース部分』の工夫しかありません。しかし、これは!と思わせるような技術は少なく、落ちにくさを実現するには一番難しいメイクアイテムだと言えるでしょう。
私が唯一、リップで認めている技術は、資生堂の『カップにつかないリップ』です。
女性なら経験があると思いますが、何かを飲む時、カップにリップがついてしまいますね。これを克服したのが、資生堂の技術です。
『オイルコントロール技術』と言って、唇に塗ると、唇上でオイルが分離します。一番外側、空気と接するところ(カップと接するところ)に、まるで唇をコーティングするかのようにオイル層が出来るために、カップにつきにくいというものです。
この技術自体は2010年頃のモノですが、先ほども述べた通り、リップにはこれといった技術がありませんでしたから、非常に画期的でしたね。
現に、化粧品会社のオリンピックともいうべき『IFSCCで最優秀賞』を受賞しています。まさに、『世界に認められた技術』と言えるでしょう。
▼IFSCCについては以下記事をご覧ください
マスカラ
マスカラの場合は、汗や皮脂に対してというより、摩擦などの『外的刺激』に対して強いことが重要です。キーとなるのは『被膜形成剤』です。
皮膜形成剤をたくさん配合すれば、外的刺激に非常に強い(落ちない)マスカラは出来ます。実際、ファンデーションに比べて、マスカラには多量の皮膜形成剤を配合しています。
しかし、あまりに強すぎて、今度はクレンジングで落ちないという問題が発生しました。
そこで登場したのが、『ぬるま湯(お湯)で落ちる』マスカラです。
これはつまり、『ぬるま湯で軟らかくなる被膜形成剤』です。
汗、皮脂、涙、外的刺激に強いが、温度に弱い。日頃の生活で、ぬるま湯をかぶることなんてあり得ませんから、『温度』に着目した点は素晴しいですね。
私も使用したことがありますが(あくまで研究として)、ぬるま湯と言いながら、40℃近いお湯でないと綺麗に落ちなかったことを覚えています。40℃ってかなり熱いです。目の周りにこんな熱いお湯をかけていいのか少し不安でしたが、今では技術が進歩して、もう少し低い温度で綺麗に落ちるのでしょうか?
おわりに
いかがでしょうか?落ちない、崩れないメイクは存在しませんが、『ベース部分』、『色部分』の技術開発で、『落ちにくい、崩れにくいメイク』はたくさんあります。
まだお使いになったことがない方は、一度、お使いになってみてはいかがでしょうか?
ただし、メイクは必ず、その日のうちに落とさなければなりません。
崩れにくいメイクの技術が進歩すればするほど、同じだけ、『クレンジング技術』も進歩しなければなりませんから、化粧品メーカーも大変ですね。
崩れにくいメイクをご使用であれば、クレンジング力抜群の『オイルクレンジング』をおすすめします。おすすめするというより、崩れにくいメイクなら、オイルクレンジングしか落とせないでしょう。
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※本記事の内容は個人の見解であって効果を保証するものではありません