近年、存在感が薄くなってきたコスメアイテムがあります。
それが『化粧下地』。
今回は、化粧下地は必要か?はたまた消えゆくアイテムか?、化粧下地について、化粧品開発者の私が、真剣に考えてみたいと思います。
この記事を書いている人
コスメデイン
- 大手化粧品メーカーで15年以上化粧品開発を担当
- 今も現役の化粧品開発者
- 美容雑誌の監修経験あり
- 現役の化粧品開発者が業界の最前線で得てきた知見を「コスメの真実」としてお届けします!
美容雑誌の監修に協力させて頂きました(一部抜粋)
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化粧下地は必要? 消えゆくアイテム?
化粧下地は、スキンケア基礎品でお肌を整えた後、パウダーファンデーションの前に、お肌に塗るコスメアイテムです。
その役割は、『お肌とパウダーファンデーションの接着を高め、ファンデーションの仕上がり(均一塗布、化粧モチなど)を飛躍的に高めること』です。
このように、非常に重要な役割を担っている化粧下地ですが、現在、存亡の危機にあり、消えゆくアイテムであると、私は考えています。
その理由は2つあります。
ユーザーのパウダーファンデーション離れ
私が化粧品業界に入った1990年代後半は、ファンデーションと言えば『パウダー』というくらい、パウダーファンデーションが全盛の時代でした。
私も当時、何品ものパウダーファンデの製剤化を担当しました。
しかし、現在はどうでしょうか?
BBクリームの影響もあると思いますが、メイクは、長時間(朝~昼~夜)お肌の上にありますから、『メイクにも美容効果を』『メイクにも保湿効果を』というのが現在の主流です。
ですから、ファンデの中でも、美容効果・保湿効果が高い『リキッド(クリーム)ファンデーション』が大人気で、パウダーファンデには一時期の勢いはありません。
しかも、化粧品メーカーにとって、パウダーファンデは利益を生みにくいアイテムです。
リキファンに比べ、圧倒的に『原材料価格(原価)』が高いんですね。
考えてみてください。
リキファンの大部分は『水』です。しかし、パウダーファンデには水は含まれておらず、水より圧倒的に原料価格が高い『粉体』と『油』で構成されています。
また、リキファンの容器は『チューブ』が多いです。パウダーファンデは『コンパクト』です。チューブとコンパクトでは、包材価格が全く違います。圧倒的にコンパクトの方が包材価格は高いです。比べ物になりません。
さらに、パウダーファンデは、割れるなど、落下や衝撃による『品質トラブル』が起きやすく、ユーザークレームが多いアイテムでもあります。
以上のことから、化粧品メーカーも、『高原価』で『品質トラブル』になりやすいパウダーファンデよりも、リキファンに力を入れたいのが本音で、ユーザーがメイクに美容効果を求め、ユーザーニーズがパウダーよりもリキッドに傾いているのであればなおさらです。
ただし、パウダーファンデーションが無くなることはありません。
ファンデーションの一番の役割は『お肌を綺麗に見せる(演出する)』です。
タイプによって一長一短はありますが、『仕上がり』という点において、パウダー以上のものはありません。
が、化粧下地が消えゆくこの現状の一因が、ユーザーのパウダーファンデーション離れにあることは間違いないでしょう。
多機能コスメの誕生
2000年に入った頃から、化粧下地の機能を併せ持つ、いわゆる『多機能タイプ』のコスメアイテムが誕生し、瞬く間にユーザーの支持を得ていきました。
それが『BBクリーム』と『オールインワンジェル』です。
昔の化粧下地は、パウダーファンデーションの仕上がりを高めるという機能だけで、その他の機能はありませんでした。
しかし、BBクリームであれば、化粧下地は当然のことながら、美容液、日焼け止め、ファンデーション、コンシーラーなど、様々な機能があります。
オールインワンジェルであれば、化粧下地は当たり前、化粧水、乳液、クリームといった基礎品の機能まであります。
『多機能タイプ』は、『時間』と『手間』、さらに化粧品にかける『お金』が節約できますから、ユーザーにとってなくてはならないアイテムに成長しました。
ですから、よほどのことがない限り、ユーザーは、単機能(仕上がり向上)だけの化粧下地ではなく、多機能タイプを選択すると思います。
現に、昨今のBBクリームとオールインワンジェルの勢いはすごいです。
以上のように、これら多機能コスメの誕生により、益々、化粧下地の存在が危うくなってきました。
化粧下地は今後どうなる?
パウダーファンデーション離れや、多機能コスメの台頭で、化粧下地の存在が危ういのは事実です。
ですが、化粧下地という『アイテム』・『カテゴリー』が消えそうなだけであって、『化粧下地機能』そのものは消えません。絶対に必要です。
何故なら、先ほども述べた通り、『仕上がり』という点においてパウダーファンデ以上のものはなく、パウダーファンデの市場規模は小さくなったとしても、無くなることはあり得ないからです。
それならば、今後の化粧下地はどうあるべきか? かつての地位を取り戻すために何をすべきか?
私は、原点に帰って、化粧下地としての本来の機能を強化し、とことん突き詰めるべきだと考えています。
つまり、何度も言うように、化粧下地の一番重要な機能は、パウダーファンデーションの『美しい仕上がりを実現する』ことです。
美しい仕上がりとは、パウダーファンデーションが、均一塗布される、時間が経っても美しい状態を維持している(崩れない、くすまない)ことを意味します。
BBクリームやオールインワンジェルに下地機能はありますが、BBクリームに配合されている酸化チタンや酸化鉄といった『粉体』、オールインワンジェルに配合されている各種『美容液成分』に、『美しい仕上がりを実現する役割』はあるのでしょうか?
そのような役割はありません。
BBクリームに配合されている、酸化チタンや酸化鉄などの粉体は、『紫外線防御』や『ファンデーション』の役割のため、オールインワンジェルの各種美容液成分は、『美肌(保湿)効果』を得るために配合されているのです。
決して、パウダーファンデの美しい仕上がりを実現するために配合されているわけではありません。
つまり、これからの化粧下地は、化粧下地としての本来の役割を強化すべく、『パウダーファンデの美しい仕上がりを実現するための研究』を続け、酸化チタンや酸化鉄などの余分な成分は配合せず、『美しい仕上がりを実現するためだけの成分を配合』すればいいと、私は考えています。
BBクリームやオールインワンジェルでは到底達成できない、『驚くべき仕上がりを実現する化粧下地』が誕生すれば、自然とユーザーは戻ってくるはずです。
このように、化粧下地の復活を期待しながらも、リキッドファンデーションの勢いは止まらず、様々なリキファンが発売されています。
注目すべきが、『資生堂 HAKU 薬用 美白美容液ファンデ』。
この商品は『HAKUブランド』ですから、ただのリキファンではなく、『美白機能』を持っています。
『Care-Hybrid ファンデーション』(ケアハイブリッド)の名が示すように、素肌まで綺麗にする『スキンケア効果』と美しい仕上がり(『メイク効果』)を実現させた、資生堂独自のファンデーションです。
美白の有効成分には、資生堂の独自成分『4MSK(4-メトキシサリチル酸カリウム塩)』を配合しています。
また、『紫外線カットスペック』もさすが資生堂です。
本品は『SPF 30 PA+++』。
そもそもリキッドファンデーションに、「SPF 50+ PA++++」の最高スペックなんて必要ありません。
リキファンに最高スペック(紫外線カット)を付与しようとすると、『仕上がり』を犠牲にせざる得ないので、ファンデーションにとって一番重要な『仕上がり』を犠牲にしてまで、紫外線カットを優先する必要はありません。
生活紫外線を浴びる程度であれば、「SPF 30 PA+++」で十分。もし、長時間屋外で活動したり、スポーツする場合は、最高スペックの『日焼け止め』を併用して頂ければいいと思います。
日焼け止めスペックは、ご自身の今日一日の生活スタイルに合わせて決めてください。
このようなすごいリキッドファンデーションが登場すると、益々、化粧下地の存在が厳しくなりますね。
※本記事の内容は個人の見解であって効果を保証するものではありません