化粧品には水と油が配合されています。
しかし、水と油は、決して混じり合うことはありません。この水と油を混じり合わせるのが界面活性剤です。
ですから、化粧品にとって、界面活性剤は欠かせない存在です。
この界面活性剤、複数の種類があることをご存知でしょうか?今回は現役の化粧品開発者の私が、界面活性剤についてご説明いたします。
本記事の内容
- 化粧品の必須成分である界面活性剤の種類と役割が分かる
この記事を書いている人
コスメデイン
- 大手化粧品メーカーで15年以上化粧品開発を担当
- 今も現役の化粧品開発者
- 美容雑誌の監修経験あり
- 現役の化粧品開発者が業界の最前線で得てきた知見を「コスメの真実」としてお届けします!
美容雑誌の監修に協力させて頂きました(一部抜粋)
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界面活性剤とは?
界面活性剤は、水の性質を持つ(水となじみがいい)親水基と、油の性質を持つ(油となじみがいい)親油基(疎水基)を持っています。
一つの分子の中に、水と油、両方の性質を持っているので、通常では混じり合わない水と油の懸け橋となって、両者を混じり合わせることが出来るのです。
水と油の両方の性質を持つ界面活性剤ですが、その中でも、水の性質が強い親水性の界面活性剤と、油の性質が強い親油性の界面活性剤に分けられます。
また、親水基の特性により、界面活性剤にはアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤の4つの種類があります。
アニオン界面活性剤
親水基が-(負)に帯電しているものを、アニオン界面活性剤と言います。「陰イオン界面活性剤」や「石鹸」、「金属石鹸」と言う場合もあります。
ウォッシュ(洗顔)に主に用いられます。
ウォッシュはアニオン界面活性剤の分散体です。アニオン界面活性剤の塊と言っても過言ではありません。洗浄力に大変優れるため、アニオン界面活性剤=洗浄剤とお考えください。
洗浄力など、界面活性剤としての機能は非常に優れていますが、お肌への刺激が強く、安全性に課題があります。ですから、スキンケアの乳液やクリームといった、基礎スキンケア品にはあまり配合されません。
化粧品の場合、ウォッシュのような洗い流し品への配合がメインです。
最近は弱酸性を謳う化粧品が増えてきました。アニオン界面活性剤は、弱酸と強塩基の塩でもあるので、アルカリ性になります。
ですから、アニオン界面活性剤を配合した化粧品は、弱アルカリ性になるため(pH 8~11位)、弱酸性が訴求できません。これも、乳液やクリーム等の基礎スキンケア品に配合されない一因です。
ただし、アニオン界面活性剤が配合されているスキンケア品もあります。特に敏感肌の方は、肌トラブルの可能性がゼロではないのでお気を付けください。
アニオン界面活性剤は親水性の界面活性剤です。
カチオン界面活性剤
親水基が+(正)に帯電しているものを、カチオン界面活性剤と言います。「陽イオン界面活性剤」とも言います。
主にトリートメントなどヘア品に配合されます。
スキンケアの乳液を、トリートメント代わりに髪につけたらどうでしょうか?パサパサになると思います。
これは、基本、乳液にはカチオン界面活性剤が配合されていないからです。
なぜなら、髪の毛は-(負)に帯電しています。トリートメントに配合されているカチオン界面活性剤は+(正)に帯電しているため、髪の毛にくっつきます(髪は-電荷なので)。ですから、トリートメント使用後の髪の毛は、カチオン界面活性剤が髪の毛にくっついているので、指どおりがなめらかなのです。
カチオン界面活性剤もアニオン同様、スキンケアの基礎品にはあまり配合されません。ヘア品が主です。ですが、配合している商品も少ないですが存在するので、お肌が弱い方はご注意ください。
カチオン界面活性剤も親水性の界面活性剤です。
ノニオン界面活性剤
親水基が+(正)にも-(負)にも帯電していないものをノニオン界面活性剤と言います。帯電していないので、「ノンイオン」=「ノニオン」というわけです。
ノニオン界面活性剤は、クレンジング、乳液、クリーム、BBクリーム、日焼け止め、ファンデーションなど、水と油が含まれる化粧品の全てに配合されますので、界面活性剤の主役と言えます。
高い安全性も特徴の一つ。
アニオンやカチオンは「親水性の界面活性剤」でしたが、ノニオンは、その分子の形によって親水性、親油性の2種あります。
(A)は親水基はそのままで、親油基が短く(小さく)なっています。(B)は親水基が大きくなって、親油基はそのままです。
(A)と(B)のように、界面活性剤分子の中で、親水基の占める割合が大きいものが、親水性の界面活性剤です。
(C)は親水基はそのままで、親油基が太く(大きく)なっています。(D)は親水基が小さくなっています。
(C)と(D)のように、界面活性剤分子の中で、親油基の占める割合が大きいものが、親油性の界面活性剤です。
このように、ノニオン界面活性剤には、親水性と親油性の2種類あり、実際の化粧品では、これらを組み合わせて、最適な界面活性剤バランスで配合しています。
両性界面活性剤
親水基が+(正)と-(負)両方に帯電しているものを、両性界面活性剤と言います。
主にシャンプーなどのヘア品に配合されます。基礎スキンケア品で良く配合される両性界面活性剤はレシチンです。
おわりに
いかがでしょうか?
化粧品における界面活性剤の役割と種類について、詳しく解説しました。
水と油を結びつけるこの不可欠な成分は、アニオン、カチオン、ノニオン、そして両性界面活性剤という、それぞれ異なる特性を持つ複数の種類に分けられます。各界面活性剤は、化粧品の洗浄力、安全性、使用感に大きく影響を与え、製品の性能を左右します。特にノニオン界面活性剤はその高い安全性と多様性から、化粧品の主役として広く用いられています。
この記事を通じて、界面活性剤の基本的な知識をお伝えすることで、皆様が化粧品を選ぶ際に、成分表示をより深く理解し、自分の肌に合った製品を見極める手助けができれば幸いです。化粧品の世界は奥深く、その一端を知ることで、より豊かな美容ライフを楽しむことができるでしょう。
※本記事の内容は個人の見解であって効果を保証するものではありません