この記事で分かること
- 化粧品の安全性について
2001年の全成分表示制度導入以降、化粧品業界は大きく変化しましたが、それに伴い安全性を軽視するメーカーが存在するのが現実です。
そこでこの記事では、大手化粧品メーカーで15年以上、今も現役の化粧品開発者として活躍し、さらに大手美容雑誌の監修経験も豊富なプロフェッショナルの私が、化粧品の安全性について、詳しく解説します!
この記事を書いている人
コスメデイン
- 大手化粧品メーカーで15年以上化粧品開発を担当
- 今も現役の化粧品開発者
- 美容雑誌の監修経験あり
- 現役の化粧品開発者が業界の最前線で得てきた知見を「コスメの真実」としてお届けします!
美容雑誌の監修に協力させて頂きました(一部抜粋)
化粧品の安全性
化粧品とは、人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪をすこやかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう
これが化粧品の定義です。
薬機法第2条第3項(旧薬事法)に定められています。
ここで重要なことは、化粧品は、人体に対する作用が緩和なものであり、医薬品のように強い作用(効果)と、それに伴う副作用はあってはなりません。
医薬部外品も同様で、「医薬部外品とは作用が緩和なモノ」と、薬機法に明確に記載されています。
だからこそ、化粧品(医薬部外品含む)にとって一番重要なことは、「効果」でも「価格」でも「ブランド」でも「デザイン」でもなく、安全性(緩和な作用)なのです。
安全であることが、化粧品(医薬部外品含む)の大前提
しかし、安全であるはずの化粧品ですが、残念なことに過去、「悠香 茶のしずく石鹸」や「カネボウ 白斑」のような、安全性に関わる大事件を起こしています。
何故、安全が大前提の化粧品に、肌トラブルが起きるのか?
事例を挙げながらご説明します。
化粧品の安全性はメーカーの自社基準
安全であることが大前提の化粧品に「肌トラブル」が起こる一番の理由は、化粧品の安全性基準が、国が定める統一基準ではなく、化粧品メーカーが定める自社基準だからです。
国は、事細かに安全性に関する基準を定めていません。
国は、配合成分などの安全性基準の大枠を定め、化粧品メーカーが細かく、各社独自の安全性基準を定めています。
何故、国が定める統一基準ではなく、化粧品メーカーの自社基準かというと、それには、2001年の全成分表示制度の導入が大きく関わっています。
2001年、化粧品に全成分表示制度が導入されました。
背景には、「ユーザーへ必要な情報(全成分)を提供したうえで、ユーザーニーズの多様化に対応し、より多くの選択を可能にするため」と言われていますが、いわゆる規制緩和です。
それまでは、化粧品に配合出来る原料(成分)には制限がありましたが、様々な原料(新規原料)を化粧品に配合出来るよう規制を緩和しました。
そして、規制緩和する代わりに、配合成分のすべてをユーザーに公開するとともに(全成分表示)、化粧品に関するトラブルは全て化粧品メーカーが責任を負うことになりました。
全成分表示制度が導入される2001年以前は、国が定める化粧品原料基準で定められた原料のみ、化粧品に配合出来ました。
当時は、「化粧品原料基準」に記載がない、新規原料を化粧品に配合するには、9項目試験と呼ばれる安全性試験をクリアする必要があったのです。
※9項目試験:急性毒性、皮膚一次刺激性、連続皮膚刺激性、感作性、光毒性、光感作性、眼刺激性、変異原性、ヒトパッチ
全成分表示制度の導入(規制緩和)とともに、9項目の必要性はなくなり、各メーカーの企業責任のもと、安全性を判断するようになったのですが、メーカーの技術力と言うと、「効果が高い成分」とか、「感触に優れた製剤」といった、成分・製剤に着目しがちですが、安全性を評価するためには高い技術力が必要である事を忘れてはいけません。
現在は、脱動物試験の流れですから、以前に比べ、より一層、安全性データの取得が困難になっています。
一方で、業界全体として動物試験に代わる、代替法の検討がなされており、この代替法で安全性を確認するには、技術力が必須です。
技術力がないメーカーでは、代替法で安全性を確認することは難しいでしょう。
私はこのブログで、コスメの真実をお伝えしながら、日本ブランドであれば、「アテニア」・「資生堂」・「ポーラ」・「オルビス」・「ファンケル」などの化粧品メーカーの商品を紹介するケースが多いです。
これらは、誰もが知る大手化粧品メーカーであり、製品が良いことは勿論ですが、安全性を評価する技術力を有しているからこそ、紹介しています。
以上のように国は、化粧品の配合成分に対して、事細かな規制はしていません。
※配合禁止・配合制限成分リスト及び、特定成分群(防腐剤、紫外線吸収剤、タール色素)の配合可能成分リストによる規制はしています
詳細は、化粧品メーカーの自社基準に委ねられているのです。
コスメの安全性基準は国が定める統一基準ではなく、各化粧品メーカーの自社基準であり、「化粧品メーカーごとによって安全性基準は違う」ということを忘れないでください。
では、次に、コスメの安全性基準に関する事例をご紹介します。
安全性トラブル事例
悠香 茶のしずく石鹸
悠香が販売していた茶のしずく石鹸に、小麦アレルギーを発症する事例が報告されました。
この石鹸には、小麦の加水分解物である加水分解コムギ(原料名:グルパール19S)が配合されており、この成分が小麦アレルギーの原因と断定されました。
この事件で一番の問題は、アレルギー症状の根源であった原料、「グルパール19S」(加水分解コムギ)の安全性試験が実施されていなかったことです。
「グルパール19S」の安全性を確認していれば、このようなことは起きなかった可能性は高い。
ただし、安全性データがなくても、製品に配合して問題はありません。
製品への配合は、化粧品メーカーの自社基準・判断だからです。
ですから、安全性データがない「グルパール19S」を製品に配合しても問題はなく、あくまで、配合するしないは、化粧品メーカー(株式会社 悠香)の自社基準・判断なのです。
規制緩和によって、化粧品業界は大きく発展しましたが、一方で、自社基準ゆえ、安全性を軽視するメーカーも存在するのです。
安全性を軽視した当時の悠香の責任は重いですが、規制緩和が原因の一つとも言えるかもしれません。
サリチル酸
サリチル酸は、殺菌効果があり、アクネ菌の繁殖を抑制しますから、ニキビ予防に有効な成分です。
医薬部外品の有効成分でもあります。
サリチル酸と言えば、ニキビケアブランドのプロアクティブ。
サリチル酸を有効成分としたプロアクティブは、高い効果に加え、積極的な販売戦略を展開しています。
サリチル酸は、非常に強い殺菌力を有しますので、ニキビ予防に有効です。
しかし一方で、角質を柔軟にする効果もあり、ピーリング剤としても用いられるサリチル酸は、安全性に不安がある成分でもあります。
勿論、国から配合を認められた成分ですから、安直に危険!と言っているわけではありませんが、ピーリング効果がある以上、ニキビ肌ではない健康的なお肌の方や、乾燥肌・敏感肌の方、ニキビ肌であっても過剰使用の場合は、肌荒れや痒みの危険があるのは事実です。
プロアクティブは「サリチル酸 配合OK」と、自社の安全性基準を定めているのでしょう。
プロアクティブ以外にも、サリチル酸を配合しているメーカーがある一方、サリチル酸を自社の安全性基準で配合NGとし、サリチル酸に代わる成分としてグリチルリチン酸ジカリウムやグリチルレチン酸ステアリルを有効成分に選択しているメーカーもあります。
例えば、オルビスのクリアフルは、サリチル酸を配合しない、グリチルリチン酸ジカリウムを有効成分としたニキビケアシリーズです。
\肌刺激の懸念が少ないニキビケア/
サリチル酸はあくまで一例にすぎませんが、同じニキビケアブランドなのに、メーカーが違えば有効成分が違う理由の一つが、各社の安全性基準です。
ただし、プロアクティブの場合、メインターゲット層は10代、20代。
若い人であれば、比較的お肌は健康ですから、多少、安全性に懸念がある成分でも、ニキビを予防することの方が重要と考え、サリチル酸を配合しているかもしれません。
紫外線吸収剤
日焼け止めに配合される紫外線吸収剤は、配合可能な「種類」と「配合上限」が国から規制されています。
日焼け止めを開発する際、この規制を守って吸収剤を選択し、規制の量以下で配合します。
各紫外線吸収剤の「配合量」の規制はありますが、吸収剤の「総配合量」の規制はありません。
吸収剤の総配合量は、メーカーの自社基準です!
吸収剤は、紫外線を防御する大変有能な成分ですが、分子量が小さく、人によっては、何かしらの肌トラブルの原因となります。
ですから、吸収剤の総配合量を自社基準で定めるメーカーが存在します。
ただし、あくまで自社基準ですから、規制量はメーカー毎に異なりますし、総配合量の規制を定めていないメーカーもあります。
過去、紫外線吸収剤による肌トラブルの経験がある方は勿論、化学物質(有機化合物)をお肌に塗ることに不安がある方は、全成分表示からは吸収剤の配合量や総配合量は判断出来ませんので、吸収剤フリー(ケミカルフリー)の日焼け止めをお選びください。
\吸収剤フリー 天然成分100%の日焼け止め/
パラベンフリーなどの◯◯フリー
敏感肌領域を中心に、パラベンフリーのコスメが増えてきました。
パラベンは旧表示指定成分で、人によってはアレルギーなどの肌トラブルが起きる可能性がある成分です。
しかし、国からは、配合量の規定はあるものの、配合が許可されている成分でもあります。
「パラベンはお肌に良くない」というイメージで、自社の商品(ブランド)にパラベンを用いないパラベンフリーも、安全性の自社基準と言えるでしょう。
パラベンに限らず、「アルコールフリー」や「着色剤フリー」、「合成香料フリー」、「石油系原料フリー」などの◯◯フリーは、それらを配合しないということですから、安全性の自社基準です。
ただし、○○フリーは闇が深く、無意味な○○フリーが多数存在します。詳細は以下をご覧ください。
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その他の成分
これ以外にも、「界面活性剤」、「油剤」、「多価アルコール」、「高級アルコール」、「エキス」、「粉体」など、化粧品には様々な成分が配合されています。
全ての化粧品メーカーがそうではありませんが、基本、メーカーは、自社の製品に配合されている全ての成分に対し、自社の安全性基準を定め、配合可否、配合上限を決めています。
例えば、3価のアルコールである「グリセリン」は安全性が高いので、どのメーカーも配合上限を設けていないケースが多いでしょう。
しかし、2価のアルコールである、1-3ブチレングリコールやプロピレングリコールなどは、若干刺激のある成分ですから、配合上限を設けているはずです。
同じ成分でも、メーカー毎に、配合可否・配合上限値が異なるのも、コスメの安全性がメーカーの自社基準だからです。
最重要ポイント
化粧品の安全性はメーカーの自社基準
おわりに
いかがでしょうか?
コスメの安全性は、各メーカーの自社基準です。
ですから、国が大枠の配合規制を定めているため、基本、肌に危険な成分は配合されませんが、自社基準のため、メーカーが違えば基準の内容も厳しさも異なります。
そして、
自社基準を定めるためには、高度な安全性を評価する技術が必要不可欠!
私はこのブログで、「アテニア」・「資生堂」・「ポーラ」・「オルビス」・「ファンケル」などの化粧品を紹介するケースが多いですが、大手化粧品メーカーで、製品が良いからという理由だけで紹介しているわけではありません。
これらの理由に加え、非常に複雑な化粧品の安全性を、高い次元で評価、判断することが出来るから紹介しています。
特にファンケルは、無添加ブランドとしてのプライドがありますから、安全性を評価する技術の高さと、基準の厳しさは有名です。
ファンケルのグループ会社であるアテニアも同様。
ただし、ファンケルやアテニアだからと言って、絶対に安全、安心と言うわけではないです。
安全であることが大前提の化粧品でもお肌に合わないケースはあります。
そのような時は、直ちに使用を止め、メーカーの指示に従ってください。
また、現在はどのメーカーも、比較的お値打ちな価格でシリーズをお使い頂ける、トライアルセットが充実していますから、まずは、トライアルでお試しになって、お肌との相性を確認した後、本製品をお使い頂くことをおすすめいたします。
<ファンケル>
<アテニア>
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