グリセリンは危険ではないし、肌に悪い成分でもありません!
にも関わらず、グリセリンが肌に悪いという話を耳にしたことはありませんか?
この成分が化粧品に広く使用されているにも関わらず、なぜそのような疑問が生じるのでしょうか。
この記事では、グリセリンの化学的性質、保湿効果、そして肌への多面的な利益について、現役の化粧品開発者の視点から詳しく解説します。
グリセリンにまつわる一般的な誤解を科学的根拠に基づいて明らかにし、正しい知識でスキンケア製品を選ぶための指針を提供します。この記事を読むことで、グリセリンの真実を知り、あなたのスキンケア戦略に役立てることができるでしょう。
本記事の内容
- 「グリセリン=肌に悪い」という大きな間違いについて、現役の化粧品開発者が詳しく解説します
この記事を書いている人
コスメデイン
- 大手化粧品メーカーで15年以上化粧品開発を担当
- 今も現役の化粧品開発者
- 美容雑誌の監修経験あり
- 現役の化粧品開発者が業界の最前線で得てきた知見を「コスメの真実」としてお届けします!
美容雑誌の監修に協力させて頂きました(一部抜粋)
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グリセリンの基礎知識
グリセリンとは
グリセリンは、化学式でC3H8O3と表される多価アルコールの一種であり、その構造には3つのヒドロキシ基(-OH)が含まれています。
この特性により、グリセリンは水分を引き寄せて保持する能力が非常に高い(保湿効果)ことが知られています。自然界に広く存在し、植物や動物の脂肪の中にトリグリセリドの形で含まれているため、天然由来の成分としても注目されています。また、グリセリンは甘味を持つことから、食品添加物としても利用されます。
グリセリンの歴史
グリセリンが化粧品に応用され始めたのは、19世紀に入ってからです。その保湿性の高さが認識され、乾燥から肌を守り、柔軟に保つための成分として、石鹸やローション、クリームなど、さまざまなスキンケア製品に配合されるようになりました。
特に、乾燥した環境下での肌の保湿に優れた効果を発揮することが科学的にも証明されており、現代でも多くの保湿製品に不可欠な成分として広く利用されています。
このようにグリセリンは、古くから化粧品に配合される、実績がものすごくある成分です。
ポイント
グリセリンの化粧品への配合実績は圧倒的!
日常生活でのグリセリンの役割
日常生活において、グリセリンは私たちが思っている以上に身近な存在です。スキンケア製品だけでなく、ハンドクリーム、リップバーム、さらにはボディソープやシャンプーなど、幅広い製品に含まれています。
これらの製品においてグリセリンは、肌や髪の水分を保持し、乾燥から守る役割を果たしています。また、食品業界では、その甘味と保湿性を活かして、ケーキやキャンディーなどの甘味料や保湿剤としても使用されています。医薬品では、咳止め薬や歯磨き粉の成分としても見られ、その多様な用途はグリセリンの持つ独特の性質によるものです。
グリセリンのこれらの特性は、私たちの生活をより快適にし、健康を支える重要な役割を担っているのです。
グリセリンの肌への効果
保湿作用
グリセリンは、その卓越した保湿性により、肌の乾燥を防ぎ、水分バランスを保つために広く利用されています。
この成分は、空気中から水分を引き寄せる能力があり、肌表面に保湿の膜を形成することで、長時間にわたり肌の水分を保持します。特に、乾燥が気になる季節や、エアコンによる室内の乾燥が激しい環境下では、グリセリン配合のスキンケア製品が肌の潤いを守る強い味方となります。
さらに、グリセリンは肌に吸収されやすく、肌の深層部まで潤いを届けることができるため、内側からの保湿にも効果的です。
肌荒れ予防
グリセリンの保湿作用は、肌荒れ予防にも大きな役割を果たします。
肌の乾燥は、肌荒れやかゆみ、さらには敏感肌の原因となることがありますが、グリセリンは肌の水分量を適切に保つことでこれらの肌トラブルを予防します。また、肌のバリア機能を支え、外部からの刺激に対する抵抗力を高めることにも寄与します。
肌の健康を維持するためには、適切な保湿が不可欠ですが、グリセリンはその重要な役割を担う成分の一つと言えるでしょう。
使用感の改善
グリセリンを含むスキンケア製品は、使用感にも優れています。
グリセリンは肌に潤いを与えるだけでなく、製品自体のテクスチャーを改善し、肌になめらかに広がりやすくする効果があります。このため、グリセリン配合のローションやクリームは、肌に塗布した際のべたつきが少なく、快適な使用感を提供します。
また、肌にすっと馴染み、潤いを長時間キープすることで、日中も夜も快適な肌状態を維持することができます。肌触りの良さは、スキンケア製品の満足度を大きく左右する要素の一つであり、グリセリンはその点でも高い価値を持つ成分です。
グリセリンは、その保湿作用、肌荒れ予防効果、使用感の改善という三つの大きなメリットを肌にもたらします。これらの効果は、日々のスキンケアにおいて重要な要素であり、グリセリンを含む製品の選択は、健やかで美しい肌を保つための賢い選択と言えるでしょう。
グリセリン 肌に悪いは大間違い!
近年、グリセリンフリーを訴求するコスメが増えてきたため、「グリセリンは肌に悪い?」とのイメージが広がり、グリセリンフリーを選択するユーザーが増えてきているようですが、これは大きな間違いです。
前述したように、グリセリンは古くから化粧品に配合されている、圧倒的な実績を誇る成分です。つまり、安全性が高いということです。
グリセリンフリーは、大手化粧品メーカーの技術力には到底及ばない、中小メーカーのくだらない戦略に過ぎません。無意味なフリーの典型例です。
世の中のコスメには、グリセリンフリーの他にも無意味なフリーが数多く存在するので、これに関しては以下をご覧ください。
グリセリンフリーが叫ばれるきっかけになったのが、あるメーカーが出した研究報告によるものです。
アクネ菌は肌の健康を守るために必要な常在菌の一種ですが、過剰に増殖するとニキビや肌トラブルの原因となります。この研究報告によると、グリセリンには、アクネ菌を通常の4倍も増殖させる効果があると示されました。
この結果から一部の人達が、グリセリンはニキビを悪化させると考え、「ニキビ用化粧品はグリセリンフリーを!」と訴え、「グリセリン=肌に悪い」という風潮が広まったようです。
確かにこの研究結果は素晴らしいものですが、これは2009年の研究報告です。今から10年以上前。しかも、in vitroのもので、vivo(ヒト試験)ではないです。
2009年と言えば、私は大手化粧品メーカーの最前線で化粧品の研究開発をしていましたが、こんな研究報告、聞いたことありません。それだけ注目度が低いという事です。
勿論、研究結果に嘘偽りはありませんから、グリセリンがアクネ菌を増殖させる可能性を否定はしません。ただし、化粧品の場合、最適量で処方化するので、グリセリン高配合の化粧品は、温感クレンジング以外、あり得ません。
また、ニキビにお悩みのユーザーの皆様は、ニキビ用にはグリセリンフリーが最適!と考え、グリセリンフリー化粧品を選ぶのではなく、ニキビ用化粧品を選ぶようにして下さい。
注意
グリセリンフリーを選ぶのは間違った選択!ニキビ用化粧品を選ぶのが正しい選択です!
例えば、ニキビ用化粧品の名品にオルビス クリアフルがあります。
オルビスは日本が世界に誇るポーラのグループ会社です。クリアフルシリーズは、1990年の発売以来、絶大な人気を誇っています。
大手化粧品メーカーが誇る、大人気シリーズのクリアフルにはグリセリンが配合されています。
仮に、グリセリンがニキビを悪化させるのであれば、オルビスほどの会社が数十年にもわたって、グリセリンをニキビケアシリーズに配合することなど考えられませんし、ユーザーから絶大な支持を得られることも不可能でしょう。
10年以上前の、とあるメーカーの研究結果をもとに、一部の人達が訴える「グリセリンフリー」を支持すべきか?、大手化粧品メーカーが開発し、何十年にもわたってユーザーから絶大な人気を得ているニキビ用化粧品の名品を支持するのか?、答えは明確でしょう。
成分を選ぶのはユーザーの皆様の自由ですから、グリセリンフリーをお選びになっても問題ないと思います。しかし、グリセリンフリー化粧品の世界には大きな危険が潜んでいるので、皆様には正しい知識で化粧品を選んで頂きたいと思います。
グリセリンフリー化粧品の世界は危険がいっぱい!
グリセリン代替成分の肌刺激
グリセリンは高い保湿効果を持つ優秀な成分ですから、これをフリーにする事で、保湿力不足が起きます。それを補うために、グリセリンフリー化粧品には、グリセリン以外の多価アルコールが配合されます。
それが、BGやプロパンジオール、ペンチレングリコール等の2価の多価アルコールです(グリセリンは3価の多価アルコールです)。
BGやペンチレングリコールは、グリセリンと並ぶ優秀な保湿成分ですが、これら2価の多価アルコールには、抗菌力が備わっている点が、グリセリンと大きく異なります。
BGやプロパンジオール、ペンチレングリコールには抗菌力が備わっており、パラベン等の防腐剤を低減させることができます。
抗菌剤と聞くと、怖いイメージがあるので、表向きには保湿剤としていますが、実際は、BGなどの2価の多価アルコールは、パラベン等の防腐剤量を減らす目的で配合されるのです。
BGやプロパンジオール、ペンチレングリコールは、抗菌力により、防腐剤量を減らす事ができるので、大変優秀な成分ですが、問題は、肌刺激性(安全性)です。
グリセリンは安全性が高い成分ですが、BG等の2価の多価アルコールは、高配合することで肌刺激の懸念が増します。大手化粧品メーカーであれば、2価の多価アルコールに対して、安全に使用できる配合上限を自社の基準で設定している事がほとんどですが、グリセリンフリーを訴求するメーカーにそんな技術はありませんから、必然的に、BG等の2価の多価アルコール量が多くなります。
実際、グリセリンフリーを訴求する化粧水や乳液の全成分を見てみると、「水」の次に「BG」が表記されるものが多いので、肌刺激には注意が必要です。
グリセリンの代替にBG等の2価アルコールを挙げる人がいるようですが、グリセリンの代替にはなりません。
優れた化粧品を使う機会を喪失
グリセリンフリー製品はまだ市場においては少数派ですから、選択肢が限られます。また、先ほどもいましたが、グリセリンフリーなんてのは、大手化粧品メーカーの技術力には到底及ばない、中小メーカーのくだらない戦略に過ぎませんから、そもそも市場には優れたグリセリンフリー化粧品が少ないという現実もあります。
冒頭でも述べたように、グリセリンは、その保湿作用、肌荒れ予防効果、使用感の改善という三つの大きなメリットを肌にもたらしながら、安全性が高く、実績もある大変優秀な成分ですから、これをフリーにするのは非常にもったいないです。
そして、世の中には、グリセリンを配合した素晴らしい化粧品がたくさん存在するのに、グリセリンフリーにこだわるあまり、これら素晴らしい化粧品を使う機会を喪失するのは、ユーザーの皆様にとって大きすぎる損失です。
グリセリンフリーにこだわらなければ、以下にご紹介するように、大手化粧品メーカーが高い技術で作り上げた化粧品を使うという選択肢が広がるのです。
一方で、グリセリンに敏感なお肌や、ニキビを悪化させる可能性があるお肌にとって、グリセリンフリーは有効な場合は当然あります。その場合は、まだ数は少ないですが、大手化粧品メーカーのグリセリンフリー化粧品を選ぶようにして下さい。
大手メーカーであれば、その高い技術力により、BGなどの2価アルコールの安全性に配慮した製品設計がなされています。
既にニキビにお悩みの方であれば、グリセリンフリー化粧品ではなく、オルビス クリアフルのような、ニキビ用化粧品を選ぶ事を強くおすすめします。
グリセリンに関するよくある誤解
グリセリンの安全性についての誤解
グリセリンに関しては、肌に悪影響を及ぼすという誤解が見られます。しかし、この記事でもご説明したように、グリセリンは身体にもともと存在する天然の保湿成分であり、その安全性は高いです。
実際、グリセリンは皮膚表面の皮脂膜や角質層などに自然に存在し、肌の保湿に欠かせない成分です。
皮膚常在菌が出すリパーゼという酵素によって生成されるグリセリンは、肌の水分蒸散を防ぎ、乾燥による肌荒れを抑える効果があります。また、グリセリンは化粧品だけでなく、医療分野でも広く利用されており、その安全性と効果は長年にわたって実証されています。
グリセリン使用に関する過剰な心配
一部には、グリセリンが肌から水分を奪い、乾燥を引き起こすという過剰な心配があります。この懸念は、グリセリンを高濃度で使用した場合に限られる事象であり、一般的な化粧品に配合されている濃度ではそのようなリスクはほとんどありません。
実際、グリセリンは肌にうるおいを与え、柔らかくするエモリエント効果があり、適切な濃度で使用されることで肌の保湿に寄与します。
また、グリセリンがアクネ菌の増殖を促すという報告もありますが、これはアクネ菌が皮脂を分解して生成する自然な過程の一部であり、グリセリン自体が直接的なニキビの原因となるわけではないです。
科学的根拠に基づくグリセリンの理解
グリセリンに関する正しい理解は、科学的根拠に基づくものでなければなりません。
グリセリンは保湿剤としての役割を果たすだけでなく、肌荒れを抑える効果があることが多くの研究で示されています。また、グリセリンは使用感を向上させる効果もあり、肌に適度な濃度で使用することで、保湿されているという実感を得やすくなります。
さらに、グリセリンは発熱作用を持ち、少量の水と混ざることで温感を生じさせることができ、これが美容液の浸透を良くしたり、毛穴の汚れを落としやすくする効果に寄与します。
これらの科学的根拠に基づき、グリセリンの肌への役割を正しく理解し、適切な化粧品選びを行うことが重要です。
おわりに
いかがでしょうか?
グリセリンに関する誤解を解き明かし、その真価を再評価する本記事を通じて、グリセリンの持つ多面的な効果とその安全性について深く理解することができたと思います。
グリセリンは、保湿作用、肌荒れ予防、使用感の改善という三つの大きなメリットを提供し、日々のスキンケアにおいて重要な役割を果たしています。
近年、グリセリンフリー製品が増える中で、その選択が必ずしも肌にとって最善ではないことが明らかになりました。グリセリンが肌に悪いという誤った情報に惑わされることなく、科学的根拠に基づいた知識を持ってスキンケア製品を選ぶことが、健やかで美しい肌を保つ鍵です。
この記事が、グリセリンの真実を知り、より賢いスキンケア選択をするための一助となれば幸いです。
※本記事の内容は個人の見解であって効果を保証するものではありません