有効成分という言葉をご存じでしょうか?
有効成分とは、ある特定の症状に対して、効果効能(予防)があると厚生労働省に認められた成分です。
「特定の症状」には、しわ・しみ・ニキビ・肌荒れなどがあり、これらの症状を抑制するのが有効成分の役割です。そして、有効成分が配合されたものが医薬部外品(薬用化粧品)であり、化粧品に比べて、高い効果(予防)が期待出来ます。
世の中には様々な有効成分が存在しますが、一体、どの成分がおすすめで優秀なのか?
今回は化粧品開発者の私が、プロの視点で有効成分ランキングをご紹介したいと思います。
※本ランキングは個人の見解です
本記事の内容
- 現役の化粧品開発者が選ぶ、医薬部外品の有効成分ランキング
この記事を書いている人
コスメデイン
- 大手化粧品メーカーで15年以上化粧品開発を担当
- 今も現役の化粧品開発者
- 美容雑誌の監修経験あり
- 現役の化粧品開発者が業界の最前線で得てきた知見を「コスメの真実」としてお届けします!
美容雑誌の監修に協力させて頂きました(一部抜粋)
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ランキングの前に
有効成分ランキングの前に、ものすごく大事な事があります。
それは、何をもって判断しランキングにするか?、です。
有効成分ですから、効果が高いモノがランキング上位と考えるのが当然かもしれませんが、実は、
ポイント
有効成分に関しては基本、効果の優劣はつけられない!
何故なら、どの有効成分も、厚労省から認可を得たものです。認可を受けたという事は、効果と安全性が認められたという事。
例えば美白であれば、ビタミンC誘導体やアルブチン、プラセンタエキス等、様々な有効成分が存在しますが、いずれの成分も、厚労省から美白効果を認められたわけですから、効果がある事は大前提で、優劣はないのです。
ですから、有効成分を評価する際、効果の高さを議論するのはナンセンス。効果の高さで有効成分を評価しているような人やブログは信じない方が良いです(作用機序なら問題なし)。
以上から、本記事の有効成分ランキングの評価基準は、市場実績・コスパ・処方への配合しやすさです。
これらは、実際に処方開発をしている人間にしか分からない事です。
市場実績
有効成分の安全性トラブルで思い出されるのが、カネボウ 白斑ではないでしょうか?
カネボウの独自美白有効成分ロドデノールが白斑の原因物質です。詳細は以下記事をご覧ください。
化粧品や医薬部外品は、安全である事が大前提。医薬品のような、効果の代償の副作用は絶対にダメです。
しかし、カネボウ 白斑問題が示したように、医薬部外品であっても、国から認められた有効成分であっても、安全性に絶対はないです。
ですから私は、安全性を判断する際は、その成分の市場実績を大事にします。
言い方は悪いかもしれませんが、市場実績とは大規模なヒト試験の結果です。
長い間、多くの人に使ってもらっているという実績があれば、安全に使えると考えています。
勿論、人によって合う合わないがありますから、全ての人が安全に使えるという訳ではないです。ですが、全くの新規成分よりも、長い間多くの人が使ったという実績がある成分の方が、安全性という観点では安心出来ると考えています。
コスパ
有効成分とは国から効果が認められた成分。
医薬部外品の場合、何らかの有効成分を配合する必要がありますが、もう一つ、必須項目があります。
それは、有効成分を効果が期待できる規定量配合するという事。
つまり、医薬部外品の場合、国から効果が認められた有効成分を、効果が期待できる量(規定量)配合する必要があるのです。
当然、有効成分によって、この規定量は異なります。
規定量が「0.3%」のモノもあれば、「3%」のモノもあります。
コスパを議論する際、有効成分の単価 × 原料の単価を考える必要があるのです。
原料単価「30円 / g」で規定量「0.3%」の場合、かかるコストは9円 / 100gです。
一方、同じ単価「30円 / g」でも規定量「3%」の場合、90円 / 100gとなります。
ポイント
原料価格は、売価に反映される重要な要素
仮に原料価格がかなり高額であったとしても、規定量が少なければ、コスパは良いのです。
処方への配合しやすさ
効果が期待できる有効成分が配合されていても、医薬部外品は医薬品とは異なりますから、効果の代償の副作用は絶対に許されません。
また、治療を対象にしたのが医薬品ですが、医薬部外品の場合は、治療ではなく予防です。
治療レベルの効果はなく、予防と言う緩和な効果が大前提です。
だからこそ、医薬部外品(化粧品を含む)は、長く使い続けて頂く事で初めてその効果を発揮します。
そのためには、長く使い続けられる快適な使用感が必須。
有効成分の中には、配合する事で物性値や安定性に大きな影響を及ぼすモノがあります。このような場合、処方幅が狭まり、使用感に悪影響を与えてしまう可能性が高いです。
ですから理想は、処方に影響を及ぼさない、処方に配合しやすい有効成分。
以上、前置きが長くなりましたが、次項では化粧品開発者の私が選ぶ、有効成分ランキングを発表します!
有効成分ランキング
第一位:グリチルリチン酸ジカリウム 15点 / 15点中
市場実績 ★★★★★
コスパ ★★★★★
処方への配合 ★★★★★
栄えある有効成分ランキング第一位はグリチルリチン酸ジカリウム(GK2)です。
数ある有効成分の中で、GK2は、最も有名な有効成分の一つではないでしょうか?
GK2は、急性や慢性の肌荒れ(皮膚炎)に対して著しい効果がある事が証明されています。マスクによる肌荒れが日常化するであろうこれからの時代、益々お世話になるであろうし、注目もされるでしょう。
GK2の歴史は古く、かなり以前から化粧品や医薬部外品に配合されていますから、相当な市場実績です。
ある程度の原料価格ではありますが、驚くべきは規定量。非常に少ないです。
これはつまり、わずかな量で効果を発揮するという事で、GK2は抜群のコスパと言えるでしょう。
さらにGK2は、処方への影響がほとんどないです。処方の邪魔をしません。
豊富な市場実績、抜群のコスパ、処方への影響なし、三拍子そろったグリチルリチン酸ジカリウム(GK2)は、私の中ではNo.1の有効成分です。
GK2は優秀な抗炎症成分ですから、ニキビケアコスメの有効成分としても用いられています。
\ 有効成分:GK2 ニキビケアコスメの名品 /
同率一位:ナイアシンアミド 15点 / 15点中
市場実績 ★★★★★
コスパ ★★★★★
処方への配合 ★★★★★
同率一位の有効成分があります。それが今大人気のナイアシンアミドです。
もともとナイアシンアミドは美白の有効成分でしたが、新しくしわ改善の効果効能が認められました。
ナイアシンアミドを有効成分として配合すれば、しわ改善&美白のW訴求が可能になりますから、現在、最も人気の高い有効成分と言えるでしょう。
ナイアシンアミドのしわ改善効果が認められたのは最近ですが、この成分自体は美白の有効成分として以前から用いられていましたから、十分な市場実績があります。
規定量に関しては機密情報なので詳細は申し上げられませんが、そこそこの量を配合する必要があります。ですが、原料価格が安いので、驚くべきコスパです。
さらに、処方への影響もほとんどありません。
しわ改善&美白のW訴求が可能でありながら、驚くべきコスパと処方への影響なし。ナイアシンアミドが人気の理由がよく分かります。
同率一位:プラセンタエキス 15点 / 15点中
市場実績 ★★★★★
コスパ ★★★★★
処方への配合 ★★★★★
さらに同率一位がもう一成分あります。それがプラセンタエキスです。
プラセンタエキスは哺乳類の胎盤から得られる成分です。以前はウシ由来のプラセンタエキスが用いられていましたが、2000年初頭のBSEにより、現在はブタ由来とウマ由来が主流です。
医薬部外品の有効成分(美白)となるのはブタ由来のプラセンタであり、ウマ由来は有効成分になりませんのでご注意ください。
プラセンタエキスには、アミノ酸類、ミネラル類、核酸類、糖質類、脂質類など、様々な成分が含まれています。美白作用だけでなく、皮膚柔軟化や細胞賦活作用など、多くの美容効果が期待され古くからコスメに配合されています。
ですから実績は十分ですし、コスパ的にも大変優れています。
処方への影響もありません。
医薬部外品の場合、国に申請するのですが、プラセンタエキスは申請が比較的楽という一面があるので、メーカー受けする有効成分でもあります。
実績、コスパ、処方への影響、どれをとっても、「GK2」と「ナイアシンアミド」に負けない、素晴らしい成分です。
第四位:トラネキサム酸 13点 / 15点中
市場実績 ★★★★★
コスパ ★★★★☆
処方への配合 ★★★★☆
美白イメージが強いトラネキサム酸ですが、実は、配合量によって美白と肌荒れ防止、2つの有効成分になります。
ですから、トラネキサム酸配合コスメを選ぶ際は、美白、肌荒れ防止、どちらの効果効能なのか、商品周りの表現を見て判断される事をおすすめします。
トラネキサム酸は、数ある有効成分の中で、個人的には一番好きな成分です。
もともとトラネキサム酸は、製薬会社の第一三共が医薬品として開発した成分です。2005年、資生堂によってトラネキサム酸は、医薬部外品の美白有効成分として厚生労働省から認可され、今に至ります。
このようにトラネキサム酸は、第一三共と資生堂という、それぞれ製薬分野・化粧品分野の超一流メーカーが実績を作ってきた成分ですから、信頼度は高いです。
コスパに関しては、以前はそれほど良いというわけではありませんでしたが、最近は安価なトラネキサム酸の入手が可能となり(特許権の消滅のため)、コスパは格段と良くなりました。
処方への影響に関しては、トラネキサム酸は結晶性が高いので、一歩間違えると、製品中でトラネキサム酸が析出し、市場回収となります。それを避けるために、処方面と容器面での工夫が必要ですが、ある程度の技術を有するメーカーであればそれほど大変な事ではありません。
ちなみに、トラネキサム酸は化粧品には配合出来ません。医薬部外品にのみ配合可能な成分です。
多くのトラネキサム酸配合コスメ(医薬部外品)がありますが、やはり、資生堂に一日の長があるのではと思います。
第五位:アルブチン 12点 / 15点中
市場実績 ★★★★★
コスパ ★★★☆☆
処方への配合 ★★★★☆
アルブチンは美白の有効成分として有名ですね。
アルブチンには2種類あるのをご存じでしょうか?
それがβ-アルブチンとα-アルブチンです。
実は、医薬部外品の有効成分となるのはβ-アルブチンです。
α-アルブチンは、そもそも医薬部外品には配合出来ない成分なので、α-アルブチンを配合しても美白訴求は出来ません。
※ 美白は医薬部外品にのみ許された表現です
α-アルブチンは医薬部外品に配合出来ないため、ルール上、美白訴求は出来ませんが、その効果(チロシナーゼ活性抑制)は高く、β-アルブチンの数十倍あると言われています。
ただし、β-アルブチンに比べて、肌刺激の懸念がある成分ですから、お肌が弱い方にはおすすめ出来ません。
β-アルブチンの市場実績は十分です。
医薬部外品の有効成分になるためには、そこそこの量を配合しなければならず、価格的にも安価ではないので、コスパはそれほど良くありません。
β-アルブチンの水への溶解が少しだけ大変ですが、処方への影響はほとんどありません。
第六位:アスコルビン酸2グルコシド 12点 / 15点中
市場実績 ★★★★★
コスパ ★★★★☆
処方への配合 ★★★☆☆
アスコルビン酸2グルコシドは美白の有効成分で、水溶性のビタミンC誘導体です。
美白有効成分のビタミンC誘導体としては、最も用いられる成分だと思います。私自身、これまで様々な医薬部外品開発に携わってきましたが、おそらく、アスコルビン酸2グルコシドの部外品開発が一番多いですね。
市場実績は十分。コスパも悪くないです。
しかし、処方への配合が難しいです。
カルボマー系にアスコルビン酸2グルコシドを配合すると、減粘してしまい、増粘効果が失われます。
ですから、アスコルビン酸2グルコシドでは、カルボマージェル系コスメの実現が非常に難しい。
仮に、美白オールインワンジェルを作りたい場合、アスコルビン酸2グルコシドではジェルにならないので、有効成分にβ-アルブチンやプラセンタエキスを選ぶ場合が多いです。
そのような意味で処方制約は多く、処方化には技術を要します。
<有効成分:アスコルビン酸2グルコシド 衝撃のコスパ!>
第七位:3-O-エチルアスコルビン酸 11点 / 15点中
市場実績 ★★★★★
コスパ ★★★★☆
処方への配合 ★★☆☆☆
3-O-エチルアスコルビン酸も美白の有効成分で、水溶性のビタミンC誘導体です。直接型ビタミンC誘導体とも言われていますね。
医薬部外品の有効成分となるビタミンC誘導体の中でも、誕生は比較的遅いですが、ビタミンC誘導体自体の市場実績は十分なので、3-O-エチルアスコルビン酸の実績も問題ないと思います。
コスパも悪くありません。しかし、処方への影響がものすごく大きいです。
医薬部外品の有効成分には、非常に高いレベルで成分安定性が求められます。万一、一定量分解してしまったら即、市場回収です。
3-O-エチルアスコルビン酸を安定化させるためには、様々な条件(処方制約)があり、使用感に大きく影響を与えます。
数ある有効成分の中で、最も安定化が難しく、最も処方に影響を与える成分と言えるでしょう。
実際、過去、化粧品大手S社が、大規模な市場回収をしています。処方化が非常に難しい成分ですが、開発者としてはやりがいがある成分でもありますね。
おわりに
いかがでしょうか?
有効成分のランキングですが、冒頭で申し上げたように効果のランキングではないです。
国から効果が認められた有効成分ですから、効果に優劣はなく、効果の高さの議論は意味をなさない(作用機序の議論は意味があります)
効果ではなく、あくまで、市場実績・コスパ・処方への配合しやすさを考慮したランキングである旨、再度、ご理解ください。
また、「4MSK」や「純粋レチノール」、「ニールワン」、「PCE-DP」など、他にも医薬部外品の有効成分は存在しますが、これらは、メーカーの独自原料 or 独自原料に近いモノです。
本ランキングの有効成分は、一般流通原料で、どのメーカーでも容易に入手可能なモノを選びました。
※本記事の内容は個人の見解であって効果を保証するものではありません